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誠の目がゆらいだ。
「すごい……和泉……キレ~……」
そんなこと言われたら、ほっぺたが熱くなっちゃう。
鏡にうつる妖精のあたし。銀色の羽を背負って。そのりんぷんで全身が銀色にまたたいてる。
ゆっくりと羽をはばたかせると、起こる風。ひらめくスカートのすそ。肩で舞う髪の毛。
「ズルイよ葉児……。こんな和泉をずっと隠してたなんて……」
誠の右目から、涙がこぼれて、つっとほおを伝った。
「いいよ。和泉。オレ信じる」
「……ありがとう」
あたしは肩の力を込めて、羽をしまった。
銀色のあかりが消えて、廊下はもとの日陰にもどる。
「和泉の気持ちを尊重するよ。けど……オレさ。やっぱり和泉と葉児は、このままじゃいけないと思うんだ。だいたい、『だれも巻き込まないために、ひとりになる』なんて、葉児、カッコつけすぎじゃない!
たよればいいんだよ。和泉のことも、もちろんオレのことも。そのせいで相手を巻き込んじゃったとしても、うらみっこなしでさ。だって、和泉は、葉児のせいで何かあったっていいって、思ってるんでしょ?」
「う……うん……」
「それなら、あとは、葉児が自分の罪悪感を許せるかって、問題じゃん! あいつに本当に必要なのは、その覚悟なんだよ。自分の罪悪感を受けとめる覚悟。オレ的には、あいつの覚悟を見てみたい」
わ……誠の言葉むずかしい……。
「だからさ、和泉。葉児がオレから和泉を奪い取りにくるまで、ウソっこでいいから、カレカノのふりしててくれない?」
誠を見あげたら、ヘラっと笑ってた。
奪い取るって……。
「そんなの、ぜんぜん見込みなさそうだけど……。誠は……ウソっこのカレシでいいの?」
「だって、オレ、心ひろ~いもん」
肩をゆすって、誠は笑った。
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