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朝日を反射して、水たまりがキラキラとかがやいてる。
アスファルトを蹴って、あたしは水たまりをとび越えた。
すごい! 体が軽いっ!
まるで、背中にチョウチョの羽がはえたみたい。
ジャンプして着地しても、左足首が痛くない。
「い~ずみっ!」
ふり返ると、校門前の歩道で誠が手をふっていた。登校する生徒たちの間をぬって歩いてくる。
「よかったぁ! 和泉ぃ、松葉杖が取れたんだね」
誠はニカって、口を横に開いて笑った。おサルさんみたいに大きな耳。半そでのワイシャツに紺色の制服ズボン。肩にかけているのは、花田中学のスクールバッグ。
小学校からかわらないあどけない笑顔なんだけど、誠の身長はもうあのころのように、あたしとどっこいどっこいじゃない。
ぐ~んと育っちゃって、頭はあたしのはるか上。こないだ測ったら、百六十七あったんだって。
毎日、サッカー部で走り回っているから、細い手足はこんがり日に焼けてる。短い髪を、ワックスをつかって、頭のてっぺんで立てて。
うん。なかなかのオトコマエ。
だけど、本人、それに気づいてなくて、中身は昔とかわらず、やんちゃ坊主のまんま。
「えへへ、そうなの~。松葉杖してないと、足が軽いんだ~」
にこ~と笑い返したら、あたしの頭のてっぺんで、アホ毛がゆれた。
あたしはあいかわらず、クラスで一番のチビっ子。ワイシャツの半そでからのびる腕も、紺色のブリーツスカートから出てる足も、ひょろひょろでもやしみたい。
おまけに、いつまでたってもアホっ子で。こないだなんて、ビビって転んで、足首ねんざして。やっと、治ったところ。
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