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ライネル=クリハロス、旧名はライネル=トゥリアント。
彼はかつてクリハローズという人とエルフや獣人などの魔物が共存する国の王族最後の王女の孫である。
そんな彼が今やクリハロスと名を変え、自身を罪を背負った没落者と言っている。
その原因はライネルの祖母である当時クリハローズの王女リミ=シルグリット=クリハローズの夫にあった。
当時クリハローズ女王のサクヤは、娘のリミ王女に相応しい婿がいない事に困っていた。リミ王女は母親と同じくとてつもない実力の持ち主で、親譲りの完璧過ぎる頭脳もあり、一人でなんでもできる王女だった。
リミ王女の美しい美貌に惹かれて言い寄る者もいたが、その完璧さに男としての敗北感に耐えきれず結局は恋人どころか友人にもなれぬまま、逃げるように身を引いた。
『これじゃあリミが次期女王になっても、その次がいないじゃない!! そしたら、クリハローズ王家の血が絶えたしまうのだわ!!』
一族の存亡の危機にサクヤ女王は他国から娘の婿になってくれる王子を探しに探し続け、ようやく見付けたのが、遠く離れた異国の王子にしてリミ王女の夫となるスザク=トゥリアントだ。
彼は、サクヤ王女の『人魔平等』―――人と魔物は平等というやり方が気に入らず、密かにクリハローズ王国を乗っ取ろうと計画していたのだ。
『私の代では叶わぬか、ならば……我が子に託そう。この国を新生トゥリアント王国に。人至上主義の下に全ての魔物を虐げるのだ!!』
―――そうして、クリハローズ王家は最悪の結末を迎えた。
スザク=トゥリアントの乗っ取り計画は成功し、クリハローズ王家は有りもしない罪を背負われサクヤ王女はショックのあまり病床にふすも間もなく亡くなり、リミ女王は幽閉された。
クリハローズ王国はトゥリアント王国へと名を変え、人至上主義の下、国内の魔物は例外なく虐げられる国となり今に至る。
(ご主人様の父親は新生トゥリアント王国二代目の国王セレネス=トゥリアント。しかし、ご主人様はなんの因果かクリハローズ王家の特徴を備えた容姿をしていた。隔世遺伝なんでしょう。それが気に入らず国王はご主人様の『刻印』を肉ごと剥ぎ取り、クリハローズ最後の人間として無様に生きる道を……)
思い出すだけで殺意が湧いてくる。彼がいったい何をしたと言うのだろう。
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