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本来、どちらかが死ぬまで決闘は続き、勝った者は正義となる。だが早いうちから若き見習い騎士を失うのは大きな損失だとして、学園での決闘では命を奪う事は禁じられている。
だが命さえあれば、あとはどうなろうと決闘を行った者の自己責任となるのだ。過去には大怪我をして自主退学した者までいたという。
(しかし、なんでもあり……なんでもありときたか)
ライネルはその言葉が『剣と魔法を使って良し』という意味で捉えてはいない。
相手は『剣も魔法も、なんでもありだ』と言った。だが決闘を申し込まれた時は、戦闘はなんでもありで気絶または降参でのみ勝敗を決める、と言っていた。
(参ったな、一番めんどくさいパターンだ。何を仕掛けてくるか全然分からない)
「さあ、そろそろ始めようか。―――我が名はアルキア=カルネデス。カルネデス家当主が一子、汝に決闘を申し込む者なり」
決闘では戦う前に自身の名と身分を明かすのがこの学園でのやり方であり、ライネルにとっては、出来れば避けたいものでもあった。
「……我が名はライネル=クリハロス」
だが、これは決闘。身分を明かす事は避けられない。
「今は亡き……」
これは烙印だ。一生ついて回る咎だ。
「クリハローズ王家が末裔。罪を背負いし、没落者。汝より決闘を受けた者なり」
ニヤニヤと観客が笑っているのが分かる。
「では尋常に」
ああ、なんで自分はこんな目に合うのか。
「―――勝負!!」
見渡す限り敵だらけ。
「ご主人様!!」
味方する者は彼女だけ。
「ハハ……」
嗤えてくる。
「あーあ、やっぱムリだよ。これ」
なんでもあり、確かになんでもありだ。
「やっちまえお前ら!!」
「剣だけが取り柄の貴様など、我らに勝てるはずがない」
「徹底的に痛め付けてやるよ」
なにが優秀な騎士を輩出する学園なのだろう。
飛んでくる数々の魔法の雨。決闘相手の魔法だけではない。これは観客席からも飛んでくる。
なんでもありとはこういう事かとライネルは爆発で吹き飛びながら思った。
(騎士になりたい。こんな奴等のような汚い手を使う人間には負けたくない。勝ちたい。勝ちたい。ああ、今はただ、奴等に勝ちたい!!)
『なら立てよマスター、お前にはそれが出来る程度には鍛えたつもりだぜ? なんでもありだ、お前もそれに倣うとしよう』
その声に従い、ライネルは閉じていた目を開いた。
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