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目を開ければ、今だ止まない魔法の雨。全てが初級の、当たっても直接死に繋がらない程度の魔法だ。
(なんでもあり……なんでも、か)
向こうがそうするなら同じ事をこちらもする。最初はそんな事をするのが騎士の行いとしては正しいのだろうか、なんて思っていたライネルだが……今は違う。
(僕が目指す騎士としての在り方は……ただ正しく在り、ただ守るものなんかじゃない。僕が本当になりたいのは、あの人のような、たった一人の為に全力を尽くして戦える騎士だ!!)
「イサドラ!!」
立ち上がったライネルの叫びと共に、降り注ぐ魔法全てがライネルに着弾する前に空中で爆発した。
決闘相手のアルキア=カルネデスや観客席の生徒らは突然の事に困惑する中、
「呼ばれる前に飛び出すところでしたよ、ご主人様」
いつの間にかメイドが一人、ライネルの後ろに佇んでいた。
「メイド? おいライネル、そのメイドはお前のか?」
「だったらなに? そっちはなんでもありと言ってみんなに協力してもらってたじゃないか。こちらも一人くらい加勢してもらっても問題じゃないでしょ」
「勝手ながらアルキア様、決闘前のルールの取り決めや決闘開始直後の皆さまの行い、それら全てわたくしが音声・映像共に記録させて頂きました」
「なっ……」
「別に脅すつもりはございません。ただわたくしがご主人様に加勢する事への正当性を証明する時に使うだけですので、ええ。本当に」
手で口を隠しながらホホホと笑うイサドラにライネルはやや呆れ顔で頭を掻く。なにが脅すつもりはないだ、と。
―――騎士同士の決闘にお付きのメイドや執事が加勢するなど本来は有り得ない。
この学園では生徒の見習い騎士一人に必ずお付きとしてメイドか執事が一人いるようにしている。
国を民を守る騎士という戦力を守る為、という事になっているがその実、通う者全てが上流階級の少年少女で、かつ寮で生活するなら世話役としてメイド・執事の一人は必要だろう、という貴族の方々の意見が反映された結果だ。
話を戻すが、メイドと執事たちは見習い騎士の護衛役も兼ねる為に定められた水準以上の戦闘能力を求められる。まあ早い話、騎士よりは強いのだ。
決闘に加勢されては互いの護衛役の力比べへと早変りするのは明白。例え一人のメイドの相手が、大勢の見習い騎士になろうとも―――勝つのはメイドだ。
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