一章

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一章

 死神の朝がどう言ったものか、諸君は知っているだろうか。知らない?ならば教えて進ぜよう。  まず、珈琲にトースト。砂糖は大半の者が要らぬと言うだろう。私もその口だ。トーストにはバターを二欠片。ジャムを好む者も居る。それから、ゆっくりとそれを楽しむ余裕。以上、三点。私はそこに加えニュース番組と、その日の天気予報をアクセントに加える。  諸君は随分と人間臭いじゃアないかとお思いかも知れない。けれど、今の死神は皆こうなのだ。  “今の”と言ったのには理由がある。理解し易くするために一つ、偉大なる死神の話をしよう。彼は変な奴だ。セックスと酒と葉巻を好み、実に下品な態度と言葉遣いをしている。その癖誰よりも理知的で、経験豊富、身に纏うは山高帽に燕尾服。  斯様な二面性の権化は、かつてこう言った。  「死神ってのは、あらゆるもんの中間に居なくちゃならねえ。何てったってあっちとこっちを繋ぐんだ。どっちかに偏っちゃいけねえ。自由で、柔軟に、万物と接続しろ」     
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