ねぇ、せんぱい。

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「拓也!!」 ー…なんで。 「またここにいた。菜月ごめんね、練習中なのに」 「ううん、いつものことだから大丈夫だよ」 「冬華…お前はこいつの将来が心配じゃないのか?!」 「拓也は人の将来の心配より自分の心配しなさい」 なんで、先輩が選ぶのは。 「さぁ、今日は大学入試見込んだ筆記試験の勉強するよー」 「おま、男を引きずるってどんな力持ち、な、菜月!練習さぼるんじゃねぇぞ!」 「……はい」 ちら、と見えた繋がれた2人の手を見て、また胸が痛む。 なんで、こんな可愛がってくれている私じゃ、音楽という共通点のある私じゃなくて。 音楽ができるわけでも、男勝りだから女の子らしい可愛らしさがあるわけでもない。 ー…お姉ちゃんを、選んだの? 『一生の相棒』って、どういう意味ですか。 それはー…この先もずっとお姉ちゃんといるから、私にも会えるってそういう意味なんですか? ジャン、と力任せに弾いた音は、和音も何も無くて、ぐちゃぐちゃの、醜い音だった。 ねぇ、先輩。 知ってますか? ピアノやめようと思ってた時、先輩が私のピアノが好きだって。 私のピアノでヴァイオリンが弾きたいって。 そう言ってくれたから、私のピアノがあるんです。 まだ、ピアノ続けてるんです。 ー…先輩がヴァイオリンを隣で弾いてくれないと、私がピアノをやる意味なんてないんです。 ねぇ、先輩。 私本当は知ってるんです。 先輩が私のことを必要としてるんじゃない。 私が先輩が必要なんです。 先輩が隣にいないと。 綺麗なピアノの音すらイメージ出来ないんです。 「ー…ねぇ、先輩」 どうしても、私のことを選んでは、くれないんですか?
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