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「おい!菜月ー!!」
「…拓也先輩、なんで高校に」
「いやぁ、お前が無事に音大に受かったって聞いて。よかったよかった。無事また俺の後輩だな!」
「…先輩、大学ギリギリだったって聞きましたけど」
「じ、実技はよかったんだよ!!筆記が苦手なだけで」
「…先輩、ヴァイオリン持ってますよね」
「おう、持ってるけど」
「久しぶりに、一緒に弾きませんか」
「お、菜月から言い出すなんて珍しい」
ねぇ、先輩。
私ね、たくさんたくさん考えたんです。
これから、先輩が卒業するまで私たちは相棒ですよね。
でもね、先輩。
私って割とわがままなんですよ。
「どの曲にする?」
「ー…最初に、二人でやった曲覚えてますか」
「あぁ、あれね、覚えてるよ」
「それがいいです」
「了解」
ー…愛の夢第3番/リスト
先輩はちゃんと楽譜を取り出してくれた。
あのときはまだ拙い演奏だったけれど、今ならもっといいものを作れるよね。
私は、先輩の、『一生の相棒』だから。
だから、もう少しだけ、夢を見させてください。
ー…ねぇ、せんぱい。
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