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君を追い掛けて
四階にある写真部の部室の窓からは運動部が部活している姿が良く見える。その中で一際目立っている人物を見付け、私は手に持っているカメラを構えた。
「ーー今日も相変わらず眩しいなぁ。本当に天使みたい」
そう呟きながら連写するカメラの音は止まらない。カシャカシャとなり続けるカメラのシャッター音に目の前に座る友人ーー今泉律子は呆れたように溜め息を吐いた。
「またライオン君撮ってるの? あんたそれストーカーよ」
「ライオン君じゃないですよ、雷凰君です。彼はそんなに猛獣ではないですよ」
ーーそう、 笑う姿はまさに天使!
透き通った白い肌、体操着から露出する手足には体毛が一切見当たらない。高い身長に金髪に近いブラウンの柔らかそうな髪。お母様がロシア生まれの方らしい彼の容姿は、まるで神様が日本と異国の血を天使を創るのと同じ配合で合わせたかのように美しかった。
「そう言ってるのはアンタだけだって。良いのは見た目だけで、口を開けば汚い言葉の連続だって噂よ。私のクラスの女の子なんて一度おはようって挨拶したら、「うっせー、ブス」って返されたらしいよ。ブスはないよね、私達先輩よ?」
「ああ、きっと人見知りが拗れた天使なんですよ。そういうツンツンしてるところもギャップがあってカメラ映えしますね」
「……カメラ映えって、アンタ重症ね」
「重症って、私は至って正常ですが、カメラに関してはそうですね……否定は出来ないです」
そんな話をしながら連写する手を止め、今まで撮った写真を確認する。
何十枚も撮ったのに、どれも一人の少年しか写っていない。
彼の名前は瀬戸雷凰。
見た目と同様に名前も神々しい。
彼を見付けたのは一ヶ月ほど前の新入生の入学式だった。
私は写真部として、入学式の様子を写真に収めていた時、新入生代表の挨拶の時に壇上に上がった彼の姿に目を奪われた。レンズ越しに見た彼は、本当に美しかったのだ。
ーーなんて、綺麗な人。
その日から、学校で彼を見掛ける度にカメラを向けるようになった。
綺麗な風景を撮る様にピントを合わせシャッターを押す。
彼の一瞬の表情を逃さずに撮りたいーーそう思ってしまうのは、彼があまりにも美しいからだと、私は思っていた。
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