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「雷凰君と、目が合ってしまったような……」
「流石に毎日、カメラを向けられてたら本人も気付いてるでしょ。案外、校庭からだと目立つしね、ここ」
「え……!?」
「えって今更!? ライオン君、怒って怒鳴り込みに来たりしてね。「いい加減うぜーんだよ!」ってさ」
「それは困ります!」
もし、もう撮るなと言われてしまったら、彼の笑った顔もふて腐れた顔も部活に励む顔も撮れなくなってしまう。
「まあ、本人的にも意味もなくカメラを向けられてたら嫌だろうし、撮りたいなら一言本人に許可もらった方が良いんじゃない? 私達写真部だし、イベントに使いたいとか理由つければ」
「確かにりっちゃんの言う通り、本人に断りなく撮り続けるのは非常識ですよね。 では、明日辺りにでも、謝罪も予て雷凰君の教室に行きたいと思います。……りっちゃんにも付いてきて欲しいでんすが」
「え……? 那智はカメラの事になると行動力ありすぎ。仕方ないなぁ」
彼女は、最初嫌がる表情を露骨に見せたが、「一年の教室とか行きづらいけど、那智には色々と助けて貰ってるしね」と言って了解してくれた。
「ーーじゃあ、私はバイトの時間だから先に帰るね。那智はどうするの?」
「進路調査の紙、書き終わったら帰ります」
「じゃあ、また明日」
「はい、バイト頑張って下さいね」
写真部の活動日は週に三回。イベントがあったりすると土日も活動する。
受験生の身であるこの時期は何かと進路関係の書類提出が多い。今日みたいに部活が無い日は部室でりっちゃんと二人で、提出書類や課題をやったりしているのだ。
「こんなもんかなー」
書き終わった進路調査表を手に持ち、職員室へと向かい担任に提出する。
そこで、鞄を部室に忘れてしまった事に気付き、相変わらずの自分の効率の悪さに溜め息を吐いた。
「私ってなんでこう抜けてるんだろうなー」
そうぼやきながら部室の扉を開けると、誰もいないはずの部室に一人の人影が視界に入る。
「りっちゃん?」
……の筈は無いか。もうバイト始まってる時間だろうし。それに彼女にしては、身長がやけに大きい。
ーーって、あれ?
「……ら、雷凰、君!?」
驚きのあまり珍しく大きな声が飛び出した。
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