蒼い。

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 あんたと会うた時は十七でした。 こげん天気の良か日に手紙ばくれて、誰やろて思ったらもうそん時はあんたは逃げた後で。  家の縁側で読んだとは今もよう覚えています。  男ん人やとに綺麗か字もよう覚えています。  それが恋の文やった事も、よう、覚えています。  あの時のお返事は、それはもう大変でした。 あんたはわたしば見ると電光石火の逃げ足で。 三度目やったですかね、ようようわたしが追いついたとは。 「──ひぃ婆ちゃん足速かったん?」  我が家の縁側で日向ぼっこするわたしに付き合うひ孫が聞きます。 ちょうどあん時のわたしと同い年です。 「ふつう」  わたしはひ孫に笑います。 「そしたらどがんして追いついたん?」 「靴脱いでぶん投げたんよぉ」
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