蒼い。

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「へ?」 「ひぃ婆の初恋の人たい。残念な事にひぃ爺はもっと後さいなぁ」 「え、えー……」  わたしだってひぃ爺に会うまではぶいぶい言わせとったもんです。 ただ──初めて、恋というものを教えてくれたのは、わたしの世界にたった一人だけなんです。  あんただけとよ、初めては。 「ひぃ婆ちゃん、よう覚えとうよね」  ひ孫が縁側に足を投げだして、ごろんと寝そべります。  覚えとるわけじゃなかとです。 「──今も忘れられんだけさぁ」  わたしは今日もあの時のような、青を眺めます。  こげん、蒼か日ぃにまたあんたが現れたら、まぁた靴ば投げてやらにゃあな、とわたしは光に焼ける瞼を赤く、見るのでした。
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