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第六話 <イランイラン>
「将生、そこに薬つけようか?」
すっとオミさんの手が伸びてきました。指先から冷たい雫が腰に落ちます。そっと撫でるような指先に身体が必要以上に反応して、びくんと跳ねました。
「ああ、やはり感度は良いね」
やはりって何でしょうか。「感度良い」は褒め言葉なのでしょうか?多分そうですね。みんな嬉しそうな顔して言ってくれますから。
オミさんの指はつつっと何故か腰の稜線をたどり始めました。
「肌のきめが細かい、肌の張りもいいね。これは触りたくなるよ」
小さい声で耳元で囁かれると、身体が反り返ります。
「んっ……」
あ、つい声が出てしまいました。その瞬間にどすんと音がして目の前のオミさんが消えました。
「痛ってぇ……ユズ!お前何するんだよ」
「あ゛?それはこっちの台詞だろう!オミ、お前何しているんだよ!将生も触られて変な声出すんじゃない」
えっと……変な声と言われましても、いつも褒めてくれていますよね?何故か怖いです香月さん。
「監督!こいつ外に出して。仕事にならない」
香月さんは両手でがっつりと僕の身体を囲いこんで、解放する気は無さそうですがどうしたら良いのでしょうか。
「あ、そう?じゃあ……兄貴が仕事になれば良いってことだよね」
香月さんがいつもの顔になりました。ポケットからなにやら小瓶を取り出しました。兄弟そろって瓶持って歩いているのですね。それもドクダミなのでしょうか。その瓶を開けるとふわりと甘い香りがしました。
「イランイランか、なるほど催淫効果のあるアロマか。それじゃあユズのお手並み拝見と行こうかな」
オミさんがにやにやと笑います。香月さんも不気味に笑っています。。
「サンダルウッドと合わせてあるからね。将生、この香り覚えていない?分かるでしょう」
あ、これ香月さんのシアタールームの香りですね。思い出してしまいました、つい昨日のことですが。香りに酔いそうですふわふわする気分になってきました。
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