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第十三作(調味料)
第一話 <メープルシロップ>
「はい、オーケー!お疲れさまでした」
オミさんに声を掛けられて、我に返りました。あれ、何だか変な感じです。いつもならこんな中途半端に終わる事無いのです。
「ユズ、見たい?これならって思える写真が撮れたぞ」
「あ、これいい。俺も欲しい送ってくれる?」
二人して画面を覗き込む姿は本当に素敵です。一卵性ってこんなに似てるんですね。服を脱いだら、どっちがどっちなのか見分けがつくのでしょうか。
……あれ?今、僕は同じ服を着たらではなくて、裸ならと……あらぬことを先に想像してしまいました。どうした事でしょう。
まあ、それはおいておいて本当にお二人仲良いんですね。てっきり喧嘩ばかりしているのかと思っていました。
「将生、おいで。見たいでしょう?」
おいでって……まだ服着てませんが。香月さん近寄って来て、赤い布でくるっと包んで抱きあげてくれました。
「ユズ……俺、何だか胸やけしそう。いつもそんなにベタベタなわけ?」
冷ややかにオミさんに言われました。あ、オミさんは少しクールなんですね。クールな香月さんもかっこいいです。
「おかしいと思ってたんだよね、最近ちっともユズからのお誘いないし……」
「ば、バカッ!余計な事言うなっ!」
ん?お誘い?二人でゲームでもして遊ぶんでしょうか?楽しいですよね、ゲームも。
「せっかく買ったのに使ってないし。あれね、賞味期限あるのよ……どうする?」
「頼むから。今、その話は、止めて」
香月さん?たんだん顔色が悪くなっていますよ?賞味期限?何の話でしょうか?僕は聞こえないふりをするのが正解なのか、それとも聞いてみるのが正解なのかが、わかりません。
「だって文句の一つも言いたいでしょう。ユズがオレに隠し事なんて。ねえ、将生君はメープル好き?」
「メープルシロップですか?好きですよ、甘いもの大好きです!」
「だってよ。ユズ、今日三人で試してみる?」
「絶対に嫌だ、将生はシェアしないからなオミ!」
シェアですか?僕は人間ですから分けっこは無理ですよね?
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