第十三作(調味料)

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第七話 <醤油>   もう疲れてしまって眠たかったはずなのですが……。香月さんから教えられた感覚は細胞一つ一つが覚えていて、その感覚に抗えるはずもなく、ぐずぐずと蕩けされてしまいます。  「将生、ここだよね」  耳元で囁かれるその声にさえ反応してしまいます。やはり香月さんとお兄さんは違いますね。全く同じなのに何が違うのでしょうか。ここまで身体が熱くなるのは、香月さんが特別だからですね。  いろいろな滑りを借りて、重なっているのかそれとも肌を滑っているのかわからない感覚に何も見えなくなっていきます。  身体の中で蠢く指先から自分の中心向けてに送られてくる快感にのけぞってしまいます。その瞬間に、目の端に香月さんがもう一人見えました。  ……ああ、そうでしたあれは香月さんではなくオミさんですね。とんでもない状況で、オミさんと目があってしまいました。「ちっ」と小さく舌打ちしまたオミさんがいきなり近づいてきて、唇を塞いでしまいました。  何でしょうかこれは、香月さんが倍です……二倍です。完全に思考が停止しました。足元も見えない濃い霧の中に置いてきぼりにされたような気持ちです。何を掴んでいいのかわかりません。     
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