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第十四作(衣服)
「お、お醤油を借りに来ただけですから!」
慌ててドアを閉めて立ち去ろうとすると、ぐいっと引っ張られました。
「離してくださいっ!」
「だってさ、醤油を借りに来たんだろ。手ぶらで帰るの?」
ああ、そうでした。あまりにも驚いて一目散に逃げるところでした。
「そうでした。すみません、お醤油を貸してください」
「どうぞ、キッチンにあるから勝手に持っていってくれる?俺、今仕事中で手が離せないから」
醤油くらい取ってきてくれてもいいのにと思いましたが、オミさんは僕のことは無視して、すっと部屋に入っていってしまいました。
そうですか、お仕事モードなんですね。お邪魔しては悪いですね。部屋の作りが同じなので、台所まで迷わずに行けます。
香月さんの部屋は白を基調とした部屋でしたが、オミさんの部屋は色で溢れています。一卵性で、同じDNAなのにこんなに違うのですね。
あれ?キッチン使っている形跡ほとんどありませんが、お醤油はどこでしょう。
「すみません!オミさん、お醤油はどこにありますか」
奥の部屋からオミさんが、答えてくれました。
「最近使ってないから、シンクの上のキャビネットにあるかな」
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