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第三話 <パレード>
香月さんに連れていかれたのは、確かにホテルではありますが、僕が考えていた撮影用のホテルではありません。子連れかカップルかが仲良く泊まるような。あれ…?もしかして、僕たちもまさかのカップルなのでしょうか。
「ん?将生、どうしたの落ち着かないようだね?」
ええ、落ち着きません、周りの目が怖いのです。昼間から男二人でチェックインしてナニをするんでしょうね。まあ、する事はきちんとするんですけれど。
鍵を受け取った香月さんが嬉しそうに耳元で囁いてくれます。
「パレードの見えるレストラン予約取れたから、そこでゆっくりと食事しながら夜のパレードは見ようね」
未だ午後四時前ですが、これから数時間は部屋にいるという事ですね。そうですか……。
それより囁く必要はあったのでしょうか。
平日の夕方、偶然空いていたテーブルは僕たちのためですねきっと。
部屋は本当に可愛らしくデザインされていて、デートでこんなところに来られるなんて素敵だと嬉しくなりました。
「あ、そうだ。ホテル代やチケット代、いくらですか?」
今日はまだ財布を開いた覚えさえないのです。
「将生は、何も気にしなくていいよ。俺に払わせて。そのくらい稼いでるし、他に使うところもないんだし」
この業界ってそんなに儲かるのでしょうか、それとも沢山出演しているのでしょうか。それはそれで複雑な気持ちです。
「ね、もうそろそろね。いいんじゃない?」
ん、あれ?香月さんの目が急に輝きだしました。きらきらではなくぎらぎらですが、毎回のことなので、この後の展開は読めるようになってきました。
「先に準備しててくれるかな?俺はちょっとコンビニね。将生に辛い思いさせたくないからね。」
そう言うと香月さんは出て行きました、何を買いに行ったのか想像つくようになってしまった自分が悲しいです。コンビニだと何があるかなと考えてしまいます。
そして準備にも手馴れてしまっていて、ええ、もう既につんでいます。
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