4章 ついに起きてしまったか

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その飲み物を見ると、色は黒かった。 「ありがとう。いただくよ」 腰に手を当てて、勢い良く飲む。 しかし、その黒い液体は、想像とは全く違う味をしていた。 「うぐぇへー#&@#&#」 言葉にならない悲鳴をあげてむせる。 「これコーヒーじゃない苦くないし深みがない。雑草を絞ったみたいだ。」 「あのお口に会いませんでしたか?」 従業員の女が、心配そうに聞いてくる。 一応、女が相手なので、作り笑顔を見せて 「大丈夫。大丈夫。あっこれ、何の豆ですか?」 「あっえーと、こちらはこの地域にのみ生息する仁希美豆〔にきびまめ〕と呼ばれる黒豆の一種です。普段は、人はあまり食べないのですが、黒豆を探したところこれしか見えたりませんでしたので…すいません。」 従業員の女は、謝りながらも少しほお緩めて笑っていた。 その表情にはさすがにイラっとする。 おまけに、普段人が食べないものを俺に喰わせるなんて、俺が人じゃないみたいじゃないかなどと思いつつもやはり作り笑顔で 「えへへー。そうなんですね。初めての味でした。貴重な体験をありがとうございます。」 と、お礼を言う。 すると、その従業員の女は会釈して立ち去った。
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