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「冗談言わないでよね。後、荷物そこに置いといたから中身確認してみて。」
机の上を見ると、ギルドに持って行った白い大きなリュックが置いてあった。
覗こうとどんどん近づいていく。
残り5歩くらいまでの距離になった時、店の扉が音を立てて開いた。
驚いて、慌てて振り返る。
そこには、さっき店の前で会ったヒロトの姿があった。
「ったく、何してんだよ。街がこんな時によー。早く外行くぜ。」
ソルディアが飯を作っているのに、そんなことお構い無しなヒロトの言葉にイライラが溜まる。
「てめぇ、自分の娘が飯作ってんのに、何でそれすらも待ってやれねーんだよ。そんな酷いことすんなよ。子供のわがままぐらい許してやれよ。」
家族と離ればなれになってこの世界に来た池ちゃんに取って、この事態はとても黙って見過ごせる状況ではなかった。
「ん?何言ってんだ?ソルディアは俺の娘じゃねーぞ。」
「へ?」思考が止まる。
ソルディアの料理を作っていた手も動きが止まった。
「ソルディアも少年と同じように1人で歩いているところを見つけて、話を聞いたら、
何か目的があるから、その時まで店に居たいとか言ってたからうちに居るんだ。
それよりも早く馬の出産見にいこうぜ。
俺は、お前ら2人にジテンシャの出産見せたくて早く帰ってきたんだ。」
ヒロトは、この街の雰囲気がおかしいから戻ってきた訳ではなく、馬の出産を見せたくて帰ってきただけだった。
俺は馬の出産の話と自分が勘違いしていたという話にダブルで驚いていた。
「驚くのは出産見てからにしろよな。早く行くぞ。」
ヒロトは、そう言うと外に出ようとドアに手をかける。
「ちょっと待ってよ。勝手なこと言わないでよ。こっちだって色々予定があるのよ。
これから、忙しい時だってのに…。」
ソルディアが、ヒロトを呼び止めた。
「それに、何も気付かなかったの?この街今大変な事になってるみたいだよ。心配じゃないの?」
追い打ちをかけるかのように、次々と言葉を浴びせる。
「うるせーな。そんなことより、産まれるんだぜ?新しい命がよ。お前ら2人には、ぜひ見て欲しい。来いよ。」
ヒロトはソルディアの言葉に動じなかった。その様子からは、本当に馬が好きなんだと言うことがよく伝わってきた。
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