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母ちゃんがじっと目を見つめてくる。
こんなにも見つめられたのは久しぶりだった。
とても嬉しかったが、悲しくもあった。
「純哉!あなたとはここでお別れよ。純哉!あなたは、自由に生きなさい。借金に追われる生活なんてあなたにはさせる事なんて出来ないわ。だから、別の世界に行って上手に生きなさい。借金は私達がちゃんと返すから一人で生きて………。」
途中で言葉を詰まらせて床に泣き崩れた。
「えっ?一人で生きるって、別の世界って何だよ。」
母ちゃんの言葉や突然の状況に理解しきれずに頭の中が混乱する。
頭を何度も掻きむしり、必死に考える。
「何かの冗談でしょ。もう、こんなの良くないよ。」
作り笑いをして、嘘かどうかを確認する。
しかし、その場の空気が嘘ではない事を示していた。
泣いている母ちゃんを見て爺ちゃんは、「詳しい話はわしがしよう。純哉お前には池田家先祖代々伝わるマキリウスと言われるこことは全く異なる異世界に行ってもらう。そこの大量の新聞紙を積んでいる散髪椅子を退かしてみろ。」
言われるがままに、椅子を退かす。
ゴゴゴゴゴゴと音を立てながら椅子が動いていく。
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