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「この部屋の中で模様の上に入る範囲なら、持っていけるぞ。」
そう言いながら、母ちゃんと爺ちゃんは手を離した。
模様が輝きを失った。
俺は急いで梯子を登り、思い出の物やおもちゃなどを持ってくる。
あっという間に部屋は物で溢れた。
そして、最後に店の散髪セットを持って下に降りようとしていると、婆ちゃんに話しかけられた。
「頑張られーな。」
元々口数が少なかったが今生の別れになるかもしれない時まで、こんなに短い言葉とは思わなかった。
言葉は短かったが、とても力強かった。
「頑張ります。」とだけ言い再び部屋に降りていった。
部屋に降りると物をまとめて模様の真ん中に立った。
それを確認するとすぐに、爺ちゃんと母ちゃんは手で外の線に触れた。
「バイバイ純哉。向こうには、もしかしたらあなたが4歳の時に居なくなったお父さんがいるかもしれないから、あっち行ったら探してみなさい。」
母ちゃんは真剣な表情でこちらを見ていた。
「父さんにあったら言っておいてくれ。こちらでいつまでも元気してるってな。」
お爺ちゃんは優しい表情でこちらを見ていた。どんどん光の輝きが強くなってくる。
「はい。父さんを探してみます。母ちゃん、婆ちゃん、爺ちゃん元気でね。」
俺の目には涙が浮かんできていた。
視界が光で覆われた。
キィィィーン耳鳴りも激しくなってくる。
すると、ふっと身体が宙に浮いた感覚に襲われた。
5分くらい経つとだんだんだんと光が弱くなり、視界がハッキリとしてきた。
さっきまで室内に居たはずなのに視界には草原が広がっていた。
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