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しっかりとヒロトにしがみついて、振り落とされないようにする。
ヒロトの身体はとても引き締まっていて、安心感があった。
ヒロトの「ハッ」と言う掛け声と共にチャリンコが草原を走り出す。
あっという間に狼煙の煙が小さくなった。
周りの景色が次々と目に飛び込んでくるようだった。
背の高い草、中くらいの草、青々とした草、ここに来た時には気付かなかったような様々な草に驚く。
「スゴい景色ですね~。」
素直な感想を述べる。
「そうだろう。そのうち街も見えてくるから、期待して目を見開いとけよ。」
そのまま馬に揺られて10分くらい経ったなと思った時に不意に街の城壁らしきものが視界に表れた。
「これがモナリドの街だ。もう着くぜ。」
初めて見る城壁に呆気にとられながら、門の方を見る。
すると、子供が両親と笑顔で楽しそうに話しているところだった。
何故かその場面を見ていると自然と涙が流れてきた。
「あれ、何でだろ…涙が…おかしいなぁ………母ちゃーーーーーーん爺ちゃーん婆ちゃん会いたいよう。俊太とか友達にも会いたいよう。会わせてよーー。ここだよー怖いよ~~助けてよ~。」
まるで、玩具をねだる子供のように泣き叫んでいた。
涙で目がかすみ視界がぼやける。
「安心しろよ。店で話聞いてやるから。」
門の前まで来ると、泣き疲れてまぶたが重くなる。
眠気に負けてそっとまぶたを閉じた。
すると、ヒロトは俺をおんぶしてくれた。
そのまま歩いているのが、振動で伝わってくる。
ヒロトが兵士と話して門をくぐった所で、俺は意識を失った。
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