うずみの砂

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 十二枚綴りのカレンダーが残り一枚になった。寒さが染みる台所の流し台に置かれたボウルを覗き込む。 「なかなかよく吐き出してる」  勤めから帰って来たばかりの義妹が、振りかえった。 「ねえ、たまにはボンゴレにしない?」  テーブルの上に置いた紙袋の中からさっと白ワインを取り出す。彼との同棲を解消して転がり込んできていたが、来週には実家に帰ると言っていた。 「そうね…」  ほんの少し言い澱んだ。  週一、いつものようにアサリのみそ汁。鯵の南蛮漬けでもと思っていたが、パスタに切り替えても、材料は買い置きで充分間に合う。 なにか、変えてみようと踏み出したのだから、いつもと違ってパスタにしてもいいかも。  義妹の差し出す白ワインを受け取る。 「いいかもね」  にこっと笑い合う。  さらりと滑るパスタの湯気が立つ。  グラスが三つ。  インターフォンが鳴る。  乾杯。 (完)
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