ひとくい村 病院

4/5
前へ
/38ページ
次へ
「生きたいと願う事は罪じゃない。」 優しく肉塊を撫でる。 「例えどんな姿になったとしても生きる権利はあるのだ!」 男は天を仰ぐように両手を大きく広げた。 「うわぁあああ!」 パン!パン!パン! 俺は無我夢中で引き金を引いた。 こいつは狂ってる。 まともじゃない 「おい」 男の声は低くく怒りに震えている 胸と腹から血の筋が垂れている。 そしてもう一発はヨーコの前に広げた左手に穴を開けていた。 「あぶないじゃないか。 恋人を殺す気か?」 致命傷のはずだが倒れるそぶりもない。 こいつ、アレをかばったのか? 「私じゃなかったら死んでたぞ」 カラーン!カラーン! カラカラカラ 男の銃創から押し出された弾が床に落ちた。 こいつも化け物か 逃げようにも足が動かなかった。 ぎゅるぎゅる やつの胸と腹の穴から何かが突き出した。 それは細長くウネウネと蠢いている。 ぎゅるるるる! その二本が急激に伸びて俺の右手と首に巻きついた。 初めてそれがタコの足そっくりな触手だとわかる。 ぼきり 触手の力は尋常じゃなく、嫌な音と共に手首が砕け拳銃が落ちた。 激痛で悲鳴を上げようにも首に巻かれた触手がギシギシと締め上げてくる。 「新しい器官は力加減が難しくてね。首は折らないように注意するとしよう。」 男は少し考えてからぼそりと言った。 「首を折ると蘇生に時間がかかる。」 俺もあんな姿にされるのか ヨーコのような肉の塊に 嫌だ!嫌だ嫌だ嫌だ! 「そんなに暴れなくてもいいだろう!その右手、すぐに治療してあげようじゃないか!ヒヒヒヒヒヒ!」 ミイラ男は狂笑し、俺の体引き寄せ始めた。 手にはいつの間にか注射器が握られている。 「ぐっ!ふっ!」 抵抗も虚しく俺の体はじりじりと男に近づいていく。 もはや男の体から消毒液の匂いに混ざった血臭を感じるほど近い。 「さて、どうするか・・・!?」 包帯男の片方しか見えない目が大きく見開かれた。 触手が力なく緩み、俺の首から外れる。 俺は背中に隠していたサバイバルナイフを男の腹に突き刺していた。 そのまま渾身の力で横に引き裂く。 「ガッ・・ハッ・・」 包帯の口元が赤く滲み始めた。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

67人が本棚に入れています
本棚に追加