プロローグ

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 自販機の下に小銭が入った。珍しく札は万しか持ち合わせておらず、両替も不可能なうえ代わりになる小銭も、もうない。百円玉は見える位置にはあるが、腕を伸ばしても届かなかった。諦めて立ち上がったところ、 「これをどうぞ」  突然、ペットボトルのスポーツドリンクを差し出されて条件反射で受け取った。 「え……」  ペットボトルを渡してくれた人物はそのまま颯爽と通り過ぎてしまったので、礼を述べるどころか顔もよく分からなかった。唯一確認できたのは、外股で歩くいかり肩の男だということだけだった。
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