4.違和感

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4.違和感

 クラブに通い出して一ヵ月、毎週の指導に加えて毎日家でやるようにと言われて続けたストレッチの効果を、達也は日に日に実感していた。初めは前屈をしても床に届かなかった手も、毎日続けると楽々届くようになる。肩や首の痛みを覚えることもなくなり、歩く姿勢が良くなったと言われることもあった。特に変化を感じるのは朝だ。ストレッチをするようになってからほぼ毎朝、起きると下半身がきつくなっている。健康な男性の一般的な現象だ。達也の体の調子が良くなった証だろう。  ベランダにいる雀のさえずりで目が覚めた。スウェットパンツを押し上げているそれを圭介に気付かれないようにしながら布団を出る。隣にいる圭介はまだ寝ている。ギシ、とベッドを軋ませて立ち上がった時、いきなり手首を掴まれて引き戻された。向かい合って横になる。圭介の切れ長の目がしっかり達也を捉えている。 「おう」 「け、圭介、おはよ」 「朝から元気だな」  下半身を撫でられて声が漏れる。 「ちが、これはその……」 「知ってるよ。運動やり出してからだよな。最近顔色いいもんな。クラブでもマッサージされる度に勃つのか? ほんとあの日は泣きながら相談してくるからおかしいのなんのって」  初めてクラブに行って雅久にマッサージをされた日、ストレッチを中断して慌てて家に帰った達也は、ことの詳細を圭介に話した。だが圭介はそれを「よくあることだ」と笑い飛ばしただけだった。達也はそれを聞いて自分がおかしいわけじゃないと知ってようやく安心したのである。
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