お宝屋敷と浅果探偵のリッチな事件簿

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 「ふむ、どの家にも家訓ってあるものだけど、このアッシャー家と言うのは少し独特だね」  英国のベイカーストリートから、山中にあるお宝屋敷アッシャー家にやって来た私立探偵・浅果好宗は玄関に貼られた家訓を眺めながらそう呟いた。  「うちは、自由奔放が家訓じゃけど」  フランスはモルグ街から来た浅果の友人、本乃千頁は頭をかきながら首肯くと「それ、家訓なしと変わらないけど」と突っこみをいれながら続ける。 ウィットに富んだフランス紳士のボケとユーモアに満ちた英国紳士の突っこみによる、二人のやりとりは浅果と本乃にとっては日常会話である。  「ぼくは、いついかなる時も、紳士的に論理的に生きるが浅果家の家訓なんだよね」  「いつ、何時、誰の挑戦でもうける! て奴?」  「推理に関してはそうだけど、君の場合は女性に関してだよね、それにしてもこのアッシャー家の家訓は三十一個は多すぎだよ」  探偵=犯人であってはならない、や中国人の来館があってはならない、未知の薬を持ち込んではならない、複雑な機械を持ち込んではならないに始まり、館内の恋愛は禁止といったものもあり、最後にこれらを破ったものには、強制退場してもらうと書いてある。  「わしらはこんな館で宝探しするんか?」  「だろうよ、概ねぼくの推理では......」  アッシャーが脱税の為に館の中に大金を隠していたが、バレそうになった。だから見付けだした者に明け渡して、証拠を隠滅しようと企んだ。いわば脱税手段だと浅果は推測する。  「どうかね、わしの場合はね......」  脱税はいわば巨大なへそくり、いつか使うものなら誰にもとられたくない筈。こうしたゲームの開催や運営にお金を使い支払う税金を少なく納める為の税金対策ではないかと本乃は推測するが。  「そうする金があるなら、九州や東北や広島に義援金として寄付するのが」  「正しい税金対策じゃないかと思うんじゃが」  そこだけは意見が一致した。  「何れにしても、奇っ怪な館に集まる大学生みたいな乗せられた感は拭えないけど」
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