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「ま、待ってください。お祝いって……」 「何って聞かれると難しいな。言い換えるならご褒美かな」  狼狽えていると、目を細めた小峰からくしゃりと頭を撫でられた。 「今日は本当におつかれ様。頑張ってくれてありがとう」  頑張ったことを感謝されるなんて初めてだ。心底嬉しそうに微笑んでくれる小峰に胸の中がぎゅっと苦しくなるほど嬉しくなる。それと同時に、泣きたくなるほど情けなくなった。 「お礼、言ってもらえるような事じゃないです。むしろ、これからもっと頑張らなくちゃいけないですし。それに、今までが全然出来てなかったから……」  確かに急な引き継ぎではあったけれど、その大手取引先を同期の林田は入社直後からずっと担当していたのだ。成長の遅い自分が悔しい。 「前にも言ったけど、結城は今までもちゃんと仕事できていたよ。いつまでも卑屈精神を引きずるな。それに、クレーム後の担当変更が一番難しい。かなり無茶なことを任せたとは思ってるよ。でも、ちゃんと引き受けてくれて嬉しかった」     
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