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 さらに低い声で小峰が言い返し、呆然としている間に席を立ったヤスに代わって隣に小峰が座った。 「はれ? 小峰さん、隣でしたっけ?」  さっきまで向かいに座っていたのにどうして隣に来るのか。浮いた思考と勝手に潤んだ瞳で小峰を見上げると、彼が一瞬息を飲んだ。 「ヤス、飲ませたな」 「いやぁ、さっきからふらふらよくしゃべるなぁとは思ったけど、やっぱり酔ってたか」  そんなに酔うはずない。飲んだとは言っても、カシスオレンジ一杯と逆三角形の形をしたグラスに注がれた量の少ないカクテルだ。それなのに、空いたグラスを見た小峰は小さく舌打ちした。 「ショートカクテルなんか飲ませるなよ」 「お酒弱かったんだな、悪い悪い」  ヤスと小峰のやりとりが全然理解できない。フラフラしていると、こつんと頭に何かがぶつかった。小峰の肩だ。 「あーもう、大丈夫か?」  そう言って、抱きしめるような形で小峰が倒れかけた身体を支えてくれる。 (あー、冷たくて気持ちいい)  電話のため外に出ていた小峰の身体は、どこかひんやりしていた。その冷たさが心地よくて、思わず頬を摺り寄せる。 「あーあ。小峰、この子ドストライクだろ」 「……手、出すなよ」 「出さねえよ。でもこの子、記念物並みの天然だぞ」 「その部分も含めて楽しんでるから、おかまいなく」     
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