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日曜日でも僕は朝七時に起きる。拓篤兄さんのところに行くのは夕方だから早く起きる必要は全くないのだけど、何というか一週間毎朝七時に起きてきたのに日曜日だけ違う時間に起きるのが気持ち悪いのだ。 拓篤兄さんっていうのは僕の従兄弟で歳は十以上離れている。元プロトランペット奏者で今はジャズカフェを営んでいる。僕がトランペットを始めたのも拓篤兄さんの影響で、今でもお店を早めに閉める日曜日になると拓篤兄さんのところにトランペットを教えてもらいに行っている。 僕はあまり友達と出かけたりする方ではないから日曜日は大体予定はなく、こうして朝起きて学校の課題なんかを済ませると拓篤兄さんのところに行くまで、楽器を持って河川敷で練習するんだけど、今日は何となく散歩したい気分だったから少し遠回りをして近くの大きな公園に寄ってから行くことにした。 公園には大きな池があって、そしてそれに沿うように桜の木が植えてある。桜はもう半分ほどが緑の葉に変わっていて少し寂しくなった。 その時、僕は何故か小春のピアノを聴きたいと思った。前にも言ったように小春のピアノには不思議な引力のようなものがある。正直、ピアノ経験者ではない僕から見ても小春の技術がそこまで高いわけではないということは分かる。なのに惹かれてしまう。そんな感覚は初めてだった。
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