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音楽祭に出ると言ってから、放課後は僕の方が早く音楽室に着くようになった。というのも、この部の部長は小春になっていて、出演団体の代表者は放課後に音楽祭実行委員と打ち合わせがあるからだ。大体三十分ほど遅れて彼女が来るまで僕はイヤホンで音楽を流しながら練習している。 いつも僕が来る時にはピアノが鳴っているし、楽器を演奏していない間も常に僕をからかう小春の声が聞こえているから、無音の音楽室は新鮮であり、少し寂しさを感じさせる。不思議なもので、楽器を鳴らしている時間よりもこうした無音の時間の方が耳が痛くなる。だから僕はすぐにトランペットを吹いて無音をかき消した。 しかし曲と曲の間のふとした空白に一瞬現実に戻されたような気がしてしまう。また、小春のピアノが聴きたいと感じてしまった。
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