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【柏木志乃さん、】
お世辞にも綺麗とは言えないけれど、一つ一つ丁寧に書かれた字だった。
【あなたのことが好きです。】
その文章を見つけた時、わたしは嬉しいようなくすぐったいような気持ちになった。
【以前ここであなたが眠っているのを見かけて以来、ずっとあなたと話がしてみたいと思っていました。】
差出人の名前はどこにも書かれていない。
【どうか、おれと文通してもらえませんか。】
なんて不器用で真っ直ぐな人なんだろう。
わたしはすぐにノートを取り出してページを破り、そこに差出人への返事を書くと、同じようにしてベンチの上に置いた。
───こうして、彼との文通が始まった。
【いつもここで何をしているんですか?】
【景色を眺めたり、本が好きなので読書をしたりしています。】
【そうなんですね。 おれはあんまり本とか詳しくないから、おすすめがあれば教えてください。】
差出人はいつ手紙を置いているのか、一度も鉢合わせたことはなかった。彼はきっと理由があって正体を明かさないのだろうし、わたしもそれで良いと思っていた。
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