徒花に呑まれる

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徒花に呑まれる

仕事終わり、午後20時前。 私と彼は会社のすぐ近くにある小さなイタリアンレストランを訪れた。 この店に2人で来るのは半年ぶり、2度目だ。 先に店に入った彼は出迎えてくれた店員に『予約していた青戸です』と名前を告げる。 笑顔の店員はすぐに『お待ちしておりました。こちらへ』と私達を予約席へと案内してくれた。 店内は客も少なく閑散としていた。予約をするまででもなかったなと思った。 でも今夜はどうしてもこの店に来たかった。ここで彼と食事がしたかった。 だから彼に『あのイタリアンレストランに行きたい』とお願いしたのだ。 私達が案内されたのは4人掛けのテーブル席で、壁側はソファーになっていた。 「平日は空いているね」 私がそう呟くと彼も『そうだね』と頷いた。 彼は当たり前のように私にソファー席を勧めてくれた。私はそれに甘えて奥の席にバッグを置き、着ていたコートを脱いだ。 「そういえば、前に来た時も空いていたよね」 私が半年前の事を話すと彼は『そうだっけ?』と笑っていた。 彼は2つ並んだクッション張りの椅子の片方にビジネスバッグを置き、その椅子の背もたれにスーツのジャケットを掛ける。そしてネクタイを少しだけ緩めた彼は椅子を引き寄せて私の向かい側に座った。
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