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ダンベルをラックに戻して、床に6m四方のラバーマットを敷く。
これはリングの代わりだ。感覚は違うが、さすがに本物のリングは置けないので仕方ない。
マットの上で三輪さんと向かい合い、彼が両手にはめたミットへ、シュッ! シュッ! とパンチを繰り出していく。
一打ごとにズバァン! ズバァン! と小気味いい音が室内に響く。
「うはー、強っ! 来宮くん、パンチの威力上がったね。さっきのダンベル練習の成果かな?」
三輪さんは眉間にしわを寄せ、時折「うっ!」と言いながら俺のパンチを受けていたが、5分ほどで音を上げた。
「ごめん、ちょっと弱めにしてくれる? ミットはめてても手が壊れそう……」
「すみません」
謝って力を弱めると、三輪さんは俺のフォームを見る余裕が出てきたらしい。
「あれ、なんかこの前と違う。……パンチを打つとき、腰のひねりからワンテンポ遅れて肩甲骨を動かしてるね」
「はい」
「そっか、ひねりで生じた動力を少し溜めるようにしたからパンチの威力が増したんだね」
ふんふんと頷いて、その後も俺のフォームをチェックして、ここはこうした方がいいよとアドバイスをくれる。
三輪さんは教え方が上手い。その指導に従いつつ、彼と戦ったときのことを思い出す。
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