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あのあと三輪さんから「あれが初めての試合だったんでしょ? なのに堂々としててすごいね、肝が据わってるなぁ」とメッセージが来たが、別に緊張していなかったわけではない。
本音を言えば、少し怖かった。
だけど貫一さんに弱気な自分を見せたくなかった。
虚勢で結構。強くあらねばならないときに強気にすらなれなければ話にならない。
それに貫一さんに対してとは違い、三輪さんを殴れないことはなかった。
むしろ、貫一さんに良いところを見せたい! 褒めて欲しい! 貫一さんを長浜さんに渡してなるものか! という意気込みで、思いっきり殴れた。
初めて人をまともに殴ったけど、あまり抵抗感はなかった。パンチが決まったときは快感すら感じた。――俺は意外と、ボクシングが向いているのかもしれない。
「ミット打ちはこのくらいにしとこうか」
「はい」
軽く息を乱してミットを外していた三輪さんが、思案気につぶやいた。
「でも、吉田会長、君がこんなふうに練習してるって知ったら怒るんじゃないかなぁ……」
トレーナーは、選手に適したトレーニングメニューを組む。
それ以外に独自で練習をするなど、トレーナーの組んだメニューに不満があると言うようなものだ。
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