二度目の大晦日

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苦笑して、こたつの上のノートパソコンを開いた。 この中には漆原のデータが詰まっている。 過去の試合動画はもちろん雑誌記事なども集められるだけ集めてデータ化したのだ。今はそれを何度も見て研究し、対策を考えている途中である。 智典に聞こえないように、はぁ、と小さく溜め息をつく。 ……まさか、いきなり2位と戦うなんてな……。 勇者が始まりの村を出た瞬間、ダンジョンの上階にワープしたようなものだ。 いくらチート勇者とはいえ経験値が足りない。 考えれば考えるほど不安が増していく。 けれど、地方試合をコツコツこなしてランキングが上がるのを待つよりも、ランキング2位の選手と戦うほうが智典のキャリアのためになる。 ……俺が頼んだらかなり時間がかかっただろうな。……いや、どれだげ時間をかけても無理だったかもしれない。 新人王という肩書は目を引くけれど敬遠もされる。 興行を打つジムは基本的に自分の選手を勝たせたいので、対戦相手にあまり強い選手は選ばない。噛ませ契約であれば話は別だが。
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