二度目の大晦日

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……俺の力では、智典にまともな試合を組ませてやれなかった。そう考えると、やはり漆原との試合はありがたい。 これも楠木さんのおかげだな。 感謝と不甲斐なさを感じつつ、こたつの上に頬杖をつく。 ランカー同士の戦い、か……。 そこで智典が大きなくしゃみをした。 「おい、風邪か?」 「んー……そうかもです。いままで風邪ひいたことないからよくわからないけど、多分」 「ちゃんと体調管理しろよ。今夜はもう帰って寝ろ」 「嫌です。年末年始はあなたと過ごすって決めてるんです」 「勝手に決めるなよ」 鼻をぐしゅぐしゅしている智典にティッシュを箱ごと渡すと、ちーんと洟をかんで、「治りました」と言う。 「嘘つけ」 「治りました。っ……くしゅん!」 「ほら嘘じゃないか」 「ここにいたい。貫一さんと大晦日を過ごしたい」 うだうだ言ってこたつに潜り込む。 子供か。 でも身体が大きいから入りきらずに脚が出ている。 「……あーもう、わかったよ。じゃあ布団敷いてやるから、もう寝ろ」
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