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本気で怒鳴ると、智典の腕が引っ込んだ。素直に隣の布団に戻っていく。
とりあえずほっとしたが、心臓はまだバクバクしている。
「……お前さ、ホントこういうことすんなよ。次やったら、もう二度と泊めないからな」
「……すみません。貫一さんが嫌なことは、もうしません」
しょぼくれた声に、たちまち怒りが失せていく。
「……ああもう、わかったよ。いいから寝ろ」
「貫一さん、俺、あなたを大切にしたい」
「そうか。じゃあ俺の安眠を妨げるな」
「……だけど、世界を獲ったその夜には、あなたを抱くから……覚悟してて」
「……っ」
これまでも似たようなことを言われてはいたが、こうも直接的な言葉で言われたことはなかった。
その情熱的な口調に、正体不明の感情がせり上がってきて身体が強張る。
何も返せずにいると、やがて寝息が聞こえてきた。
それでようやく身体から力が抜けたが、気分は落ち着かないままだ。睡魔も逃げたまま戻ってこない。
……ほんと、何なんだよ、こいつ……。
額を押さえて、天井に灯るおぼろなオレンジをぼーっと見上げる。
何なんだろ……。
ふと、親父の言葉が蘇った。
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