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再び膨れ上がりそうになったが、これを繰り返していてはいつまで経ってもロードワークに行けない。
パンパン、と頬を叩いて気合を入れ、寒空の下に出る。
年末の早朝の路上は俺のほかには誰もいない。まだ街路灯が灯る道を、妄想を振り払いながらひた走る。
ロードワークを終えてマンションに着くと、スマホにメッセージが入っていた。
返信して、すっかり明るくなった空を見上げる。
「……気乗りしないけど、仕方ないよな」
3時間後、俺は財布とスマホだけ持って飛行機に乗った。
到着した羽田空港からタクシーで向かった先は、代官山にあるマンションだ。
大理石のエントランスを抜け、エレベーターで最上階へ行き、そのフロアにひとつしかない玄関ドアを開けると、満面の笑みを浮かべた男が出迎えた。
「おかえり、智くん」
「……ただいま」
「待ってたよ~。ささ、入って入って」
俺の腕をぐいぐい引くこの男は、俺の父親、楠木進介だ。
183cmの長身に、40代半ばとは思えないガッシリした筋肉をまとっている。
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