煩悩と決意の大晦日

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慣れているので抵抗はしない。 父さんは引退しても趣味としてビルドアップを続けていて、俺も幼い頃から強制的に肉体開発の英才教育を受けてきた。 毎日こうして下着姿になり、全身の筋肉の発達具合をチェックされてきた。 それが嫌だったから、俺は母さんについて福岡へ行ったのだ。 当時の俺は、母さんもきっとこの筋肉漬けの夫が嫌で可憐な女性へ走ったのだろうと思っていたが、美咲さんと暮らしてみてそれが間違いだとわかった。 母さんはただ純粋に美咲さんを愛したのだ。 俺が貫一さんを愛するように。 貫一さん…… 脳裏に愛くるしいベイビーを思い描いている間に、父さんのチェックが終わった。 「うーん、細いなぁ。もっと育ててって言ったのに。質は良いのに残念だなぁ……。でも広背筋と僧帽筋と三角筋と上腕二頭筋のサイズは少し大きくなってるね……いや、これは、練られていると言うべきか……」 ぶつぶつ言っている父さんを無視してさっさと服を着る。 「あれ、そういえば兄さんは?」
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