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「会社だよ」
「え? 大晦日なのに?」
「あの子は仕事の虫だからね。年末年始も関係ないんだよ。ほんと困っちゃうよ。熱心なのはいいけどさ。僕が手伝おうかって声を掛けても、邪魔だから帰れって言うんだよ。ひどくない? しかも役員たちも社長より商才があるって褒めたたえてるしさ。そのうち僕、社長の椅子から蹴落とされちゃうかも」
「兄さん真面目だし頭いいからなぁ」
5歳上の兄は、俺と同じく母さん譲りの顔立ちだが、俺とは対照的にいくら鍛えても筋肉がつかない体質で、父さんの変質的な筋肉育成の餌食にはならなかった。
本人もそれを喜んでいるし、俺も心底羨ましかった。
だから俺は、少しでも父さんの執着が薄くなるように、筋肉を鍛えてもサイズやウエイトが大きくならないよう調整するスキルを身につけた。そうしてサイズアップを拒みつつ、いつか父さんのマッスルプログラムから解放される日を夢見ていた。
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