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「智くん、あのね、それだけ良質な筋肉を育んでいる時点でビルダーの道に片足つっこんでるんだよ。今さらその足を引っ込めるなんて勿体ないことしないでくれ」
「突っ込ませたのは父さんでしょう。俺は興味ないってずっと言ってたのに」
「確かに離婚するまでは僕が強制してたけど、福岡に行っても智くんは自主的にジムに通ってたじゃないか。福岡店から連絡が来るから知ってるんだよ」
「……いや、それはそうですけど。それは日課になってたからで……とにかく俺はビルダーにはなりません。ボクサーになると決めたんです」
「宝の持ち腐れだ。本来は膨張しやすい筋や、どれだけ筋肉がボリュームアップしてもビクともしない太く頑強な骨格という素晴らしいポテンシャルがあるのに! 智くんがその気になれば、その筋肉はもっと大きく花開くのに……!」
君の筋細胞が泣いているよ……! 胸前で拳を作って訴える父さんに、溜め息をついて首を振る。
「持ち腐れにはなりません。父さんの教えのおかげで手に入れたこの身体で、俺は世界のリングに立ちます」
「世界……?」
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