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「はい。ボクシングで世界チャンピオンになる、それが俺の目標です」
父さんはアゴに手をあてて黙り込んだ。ややして顔を上げ、
「……目標はいいけど、それだけの実力は持ってるの?」
「それは……わかりません」
まだプロテストを含めて2試合しかしていない。
しかもそのうち1試合は三輪さんとの非公式戦で、プロテストはスパーリングなので試合にカウントできない。つまり無試合も同然だ。
現時点で実力を証明できる実績はない。
父さんが肩を竦めた。
「わからないって……あのね智くん、プロの世界は厳しいんだよ。日本チャンピオンになるだけでも大変なのに世界に挑戦するなんて大言を吐くなら相応の根拠を示してくれないと、父さんは認めてあげられないよ」
「……では、その証明を、来年の全日本新人王決定戦で示します」
「全日本新人王決定戦。……ああ、新人プロボクサーの日本一を決める大会か」
「はい」
全日本新人王決定戦への出場は、貫一さんから勧められた。
普通はC級からB級、そしてA級とステップを踏まないといけないが、この試合を勝ち進めばA級になれる。手っ取り早いキャリアアップになるというわけだ。
「俺はそれに出場し、トーナメントを勝ち抜いて全日本新人王を獲得します」
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