煩悩と決意の大晦日

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全日本新人王を獲れば、日本ミドル級ランキング15位に入り、日本チャンピオンに挑む資格が与えられる。 ちなみに、ボクシングにおける「ランキング」とは、「チャンピオンに挑戦できる順序」のことだ。 現日本チャンピオンである柳瀬さんは、世界タイトルのWBAで3位に位置するランカーだ。 彼に勝てばWBAのランカーになり、世界チャンピオンへの挑戦権を得られる。 「僕が?」 「父さんは、竜門さんと友達でしょう?」 竜門蒔彦(りゅうもんまきひこ)さんは、日本を代表する名門ボクシングジムStormRatの会長だ。 日本ボクシング界のドンであり、世界と数々の交渉を重ねてきた名プロモーターでもある。 その彼が現在抱える7人の現役王者の中に、柳瀬さんがいる。 「友達というよりお客さんだよ。StormRatはうちと年間契約を結んでくれてるんだ。選手が普段のトレーニングや試合地での調整にうちのジムを利用できるようにね」 「でもよく二人でゴルフや温泉に行ってるんでしょう?」 「それはまぁ、接待も兼ねてというか。……あいつとは気が合うんだよね。好きな筋肉の部位も一緒だし」 やはり筋肉友達だったか。 ついていけない世界だと思いつつ、頭を下げる。 「お願いします。父さんが頼りなんです」
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