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熱く訴えると、父さんは苦笑した。
「まるでデジャヴだな。……静も似たようなことを言ったよ。美咲がいないと生きていけないって」
そう言って軽く目を伏せ、自分の上腕三頭筋を撫でながら語る。
「僕と静は幼馴染で、若いころの静は極度の人見知りで、僕は筋肉しか興味なくて、互いが最も親しい異性だったから当然のように結婚したけど、世間一般でいう恋愛感情はなかった。もちろん愛情はあったけど、それは家族愛……兄妹愛に近かった。
それでも静は真面目だから、結婚したからには子供を産んで良き妻にならなければと頑張っていた。そうやって自分を縛る彼女を見ているのは心苦しかった。僕は自分の好きなことを自由にやっているのだから、彼女にも自分の人生を楽しんでほしかった。でも彼女は、私はこれでいいのと自我を抑えて生きていた。
……そんな彼女に、生きがいができたと言われて、正直ほっとしたんだ。紹介してもらった美咲ちゃんはとても素敵なひとで、静を本気で愛してくれているとわかったから、安心して静を託すことができた。
離婚は少し寂しかったけど、後悔はしてない。彼女が幸せでいてくれるなら、僕も幸せだから」
「父さん……」
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