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「……今の智くんが、あのときの静に重なったよ。智くんが本気で想う相手なら、きっと素晴らしい人なんだろう。男でも僕は反対しないよ。智くんが幸せになることが一番だからね。そのために僕ができることがあれば協力するよ。……考えてみれば、智くんが僕に頼みごとなんて、これが初めてだしね」
「ありがとうございます」
「ただし、条件がある」
「条件?」
「智くんが新人王を獲ったら、僕が蒔彦に頼んで漆原くんとの試合を用意してあげる。彼に勝利することが、柳瀬くんと試合させる条件だ」
漆原礼次郎――柳瀬さんと同じStormRatに所属する日本ミドル級2位のボクサーだ。
「新人王の決勝戦はたしか来年の12月だから、試合を組むのはその翌年になるね。
今のミドル級上位はこの数年ほぼ変動がない。おそらく来年の『日本タイトル最強挑戦者決定戦』も今年と同じ組み合わせと結果になるだろうから、漆原くんは2位のままなはずだ。つまり、漆原くんと戦って勝てば、智くんが2位になれる。
そうしたらその年の『日本タイトル挑戦者決定戦』で1位の加地くんと戦える」
『日本タイトル最強挑戦者決定戦』とは、ミニマム級からミドル級までの各階級のランキング上位2名が戦うイベントで、勝者は翌年の『チャンピオンカーニバル』――日本チャンピオンと直接対決するイベントに出場できる。
「加地くんに勝ったら、柳瀬くんと最優先で戦えるよ」
「……結局、柳瀬さんに挑む権利は自分で勝ち取れということですか」
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