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ピカピカに輝くイギリス製スポーツカーに乗って羽田へ向かう。
ロータリーで降りて礼を言うと、父さんは片手を上げた。
「静と美咲ちゃんによろしくね。あと、君の大事な貫一さんにも」
「はい」
「それと、またプロテイン送るから、しっかり飲んで筋肉を鍛えてね」
「……はい」
苦笑して手を振り、ロビーへ入る。
これでひとまず希望への筋道が立てられた。
ほっとして、貫一さんへのお土産を買い、飛行機に乗り込んだ。
福岡に降り立って、地下鉄で俺の暮らす町に着くころには空はすっかり暗くなっていた。
寒風吹き抜ける路地を通り、年季が入った木造家屋の前で立ち止まる。
夜闇の中、オレンジの玄関灯が頼りなげに光っている。
貫一さんに会いたい。
お土産を渡す口実で訪問しようと思ったが、さすがに大晦日の夜に押しかけたら迷惑だろう。明日にしようか……。
悩みながらしばらく家の前でうろうろしていたが、やはり会いたい気持ちが勝った。
インターホンを押して数秒後、引き戸のガラスに人影が浮かび上がった。ガチャガチャと鍵を開ける音がして戸が開く。
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