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「どちら様?」
ひょこっと出てきた顔に、冷え切った頬がゆるんだ。
「こんばんは貫一さん」
「あれ? おまえ、お父さんのとこに行ったんじゃなかったのか?」
「貫一さんに会いたくてたまらなかったので帰ってきました。あ、これお土産です」
ひよこの絵が描かれた紙袋を渡すと、貫一さんは微妙な顔で受け取った。
「東京銘菓ひよこか……」
東京銘菓の部分に険を感じた。そこに引っかかるのは彼が福岡県民だからだろうか。
イントネーションに訛りはあっても方言はあまり使わない貫一さんだが、東京と福岡の「どっちがひよこの生産地か」論争をすれば、意外に熱く語るかもしれない。
ちなみに俺はどっちでもいい。
ただ可愛い貫一さんが可愛いひよこを食べている姿が見たかっただけだ。そしてあわよくば可愛いひよこを食べた可愛い貫一さんを食べ……
「まぁ上がれよ」
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