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「お邪魔します」と框を上がる。
踏みしめる板張りの床が冷たい。
貫一さんの家はジムと同じ年月を重ねた古い木造家屋だ。最近の住宅のように機能性に優れた設計はされておらず、夏は暑く冬は寒い。
なので空調費節約のためか、貫一さんは居間に布団を置いてその一部屋だけで生活している。
その生活スペースに入り、まず深呼吸した。
部屋に充満している貫一さんの匂いを肺いっぱいに吸い込む。
ああ、これで年が越せる。
満足して、ちゃぶ台からフォームチェンジしたコタツに入り、ぬくぬくとあったまる。
ひよこを食べて欲しかったが、貫一さんは人から貰った物を半日ほど仏壇にお供えする習慣を持っているらしい。
仏間から戻ってきて右斜め向かいに座った貫一さんが、「あれ?」と俺を向いた。
「そういえばおまえ、お母さんたちのところに帰らなくていいのか? 今日は大晦日なのに」
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