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「母さんと美咲さんはバーでカウントダウンイベントがあるので、帰っても一人なんです」
「ああ、バーを経営してるって言ってたな。……あれ? おまえ、そこでバイトしてるって言ってなかったか? イベントがあるなら手伝わないといけないんじゃないか?」
「バイトは辞めました。美咲さんと母さんが、自分のやりたいことに専念しなさいって言ってくれたので」
俺がいなくても店は美咲さん一人で充分切り盛りできる。一応(グラスを落して割る天才の)母さんもいる。
「そうなのか。……まぁ、そういうことならいいけど。ひとりで年越しするのは淋しいだろうし」
少し嬉しそうにそうつぶやいたので、貫一さんも淋しかったのかと思った。
もしそうなら、来てよかった。
よし、これからは毎年一緒に年越ししよう。
正月も一緒に過ごして、節分もバレンタインもひなまつりも子供の日も……。
年中イベントを羅列しているうちに貫一さんは台所へ行き、一升瓶とつまみを持って戻ってきた。
「おまえはまだ未成年だからお茶な」
置かれた湯呑に、急須からコポコポとお茶を注がれる。ふんわり茶葉が香る湯気の向こうで、腰を下ろした貫一さんがコップに手酌した。
「貫一さん、お酒飲むんですね。下戸かと思ってました」
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